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暑くて目が覚めた。
寝汗をかいていた。
外では涼しげな風の音がしてるのに、この部屋は妙に暑い。
空腹を感じる。
残ってるカロリーが少なすぎるのか、何かを食べるということができない。
食べたいという欲求はあるのだけれど、それが実行に移せない。
とりあえずカプチーノを淹れてみた。
暑いから冷たいのがいいのに、いつもと同じように牛乳をレンジにかけた。
ガスレンジが熱い。
むっとする熱気が漂う。
窓の外では竹林がさらさらと涼しい音で風にそよいでるのに、ここは暑い。
なんとなくスパゲッティが食べたいと思った。
でも火を使うと暑いし、面倒で作る気になれない。
パンならある。
でもなんだか暑く苦しくて食べる気になれない。
この間も温めたパンを食べきれずに捨ててしまった。
またきっと捨てる羽目になる。
そうめんがいい。
冷たいそうめんに生姜を入れてツルツルと食べたい。
竹のそよぐ音にも何となく似合ってる。
窓の外には「本物」がある。
想像ではなく涼しい気持ちのいい世界が。
でも、もう自分で確かめることはできない。
頭の中で昔感じたその本物を空想してみる。
もしかしたら部屋も涼しくなるかもしれないと思った。
でも、現実は何も変わらない。
そうめんも涼しい竹林も近くにあるのに自分には手が届かない。
あるいは最初からそんなものいらないのかもしれない。
手にしたところでその幸せがずっと続くわけじゃない。
また新しい何かを探さないといけないから。
先に見える一本道の行き先がいつの間にか変わってしまった。
進んでる自覚がないのに、歩く歩道のように勝手に前に進んでく。
全ての始まりがもうすぐそこにきてる。 |